本当に怖い、睡眠時無呼吸症候群と糖尿病の合併
SASと糖尿病の合併
糖尿病患者は日本全国に2,360万人はいると言われています。まさに糖尿病は国民病です。糖尿病の恐ろしさは皆さんよくご存知でしょう。その糖尿病に睡眠時無呼吸症候群(SAS)は合併しやすいのです。
- SASに2型糖尿病(非インスリン依存型糖尿病)が合併する頻度は11%
- SASに糖代謝異常が合併する頻度は16%
なんと、あわせてSAS患者のうち27%もの患者が糖尿病に合併しています。そして、SASの重症度が増すほどその合併率は上がります。糖尿病・SASとも脳血管障害・虚血性心疾患といった生命予後に関する病気になりやすいので、注意が必要です。
さらに、SASは肥満だから糖尿病になりやすいと想像できますが、実は、SAS自体が糖尿病を引き起こすこともわかっております。ですので、SASを罹患している方は肥満でなくとも糖尿病になるかもしれないのです。
糖尿病・SASとも『死の五重奏』に含まれます。糖尿病を指摘された患者様で “もしや!” と思われた方はSASの検査を受けられることをお勧めします。
死の五重奏とは?
死の五重奏とは、サイレントキラーと呼ばれる「糖尿病」、「高脂血症」、「高血圧」に、「肥満」と「SAS(睡眠時無呼吸症候群)」が加わった、命の危険をもたらす症状の総称。下記疾患の疑いのある方は、専門医の受診を速やかにされることを強くお勧めします。
-
01 肥満 -
02 糖尿病 -
03 高脂血症 -
04 高血圧 -
05 SAS(睡眠時無呼吸症候群)
自覚症状がないままひそかに症状が進行し、心疾患や脳血管疾患などの重篤な病気を引き起こしてしまう可能性がある。主に「糖尿病」、「高脂血症」、「高血圧」が典型的な症状であり、これらの病気は互いに合併しやすく、合併することでより加速度的に動脈硬化や心筋梗塞などを引き起こし、死亡率を増加させやすい。
SASとメタボリックシンドロームの関係
最近、新聞・テレビなどで盛んにメタボリックシンドロームという言葉が報道されています。メタボリックシンドロームとは、どういうものでしょうか。
日本人の三大死因はがん、心臓病、脳卒中ですが、心臓病と脳卒中を合わせた循環器病を引き起こす原因は「動脈硬化」です。
「動脈硬化」の危険因子といえばコレステロールが有名ですが、最近の研究では、肥満(特に内臓のまわりに付着した脂肪)がさまざまな生活習慣病を引き起こし、より「動脈硬化」になりやすいことがわかってきました。そのキーワードとなるのが『メタボリックシンドローム』です。
「メタボリックシンドローム」という考えが誕生したのは、生活習慣病によって進行する動脈硬化性疾患(心筋梗塞及び脳梗塞)を未然に防止するためです。心筋梗塞及び脳梗塞を発症すると重篤な事態に陥り、死に至ることもあります。また癌に次いで日本で多い死亡原因が動脈硬化性疾患なのです。動脈硬化性疾患は壮年期に発症することが多く、後遺症も深刻です。働き盛りの家族が動脈硬化性疾患に倒れることのダメージは計り知れません。この動脈硬化性疾患を前段階で治療するために、メタボリックシンドロームという概念が誕生したのです。
最近の研究で、睡眠時無呼吸症候群がこのメタボリックシンドロームと密接に関係があることがわかってきました。
睡眠時無呼吸症候群入院患者では、肥満67.6%、高血圧45.5%、耐糖能異常58.1%、高トリグリセライド血症55.0%が合併しており、これら4つすべての動脈硬化疾患リスクファクターを持つ<死の四重奏>患者は16.7%であったという報告があります。つまり、睡眠時無呼吸症候群の患者の多くは、メタボリックシンドロームに合併しやすいということなのです。
また、ある報告では、睡眠時無呼吸症候群自体が肥満・耐糖能異常・高脂血症・高血圧と同様に、動脈硬化を来たす大きな独立した因子であることを証明しています。つまり、睡眠時無呼吸症候群は他の生活習慣病と同等に考える必要があるということです。
メタボリックシンドロームは、以前は同じような概念で死の四重奏とも言われていました。よって、メタボリックシンドロームに睡眠時無呼吸症候群を加えて、新たに死の五重奏というキーワードが提唱されています。