発酵食品で睡眠の質は上がる?腸内細菌と眠りの関係を研究データで解説

監修:松澤呼吸器クリニック 院長 松澤 邦明(日本睡眠学会指導医/日本呼吸器学会専門医/日本内科学会総合内科専門医)
監修日:2026年10月28日/公開日:2026年10月28日/最終更新日:2026年10月28日
この記事の結論
腸と脳はつながっていて、腸内細菌が睡眠のリズムに関わることが動物実験で示されています[1]。人でも、乳酸菌などを含むプロバイオティクスで睡眠の質が改善したという報告があります[4]。
ただし、「発酵食品を食べればよく眠れる」と言い切れるほどの研究はまだありません。発酵食品は、規則正しい生活リズムと組み合わせて、毎日の食事に無理なく取り入れるのがおすすめです。
腸と睡眠はつながっている(脳腸相関)
腸と脳は、神経やホルモン、免疫の働きなどを通じて、互いに影響し合っています。これを「脳腸相関」といいます。近年は、腸にすむ細菌(腸内細菌)が、睡眠にも関わっている可能性が注目されています。
腸内細菌がいなくなると、眠りの昼夜のメリハリが弱まる
筑波大学と慶應義塾大学の研究グループは、マウスに4週間抗生物質を飲ませて腸内細菌を減らし、睡眠を調べました[1]。
- 本来眠る時間帯(明期)のノンレム睡眠が減った
- 本来活動する時間帯(暗期)に、ノンレム睡眠とレム睡眠が増えた
- 腸の中では、セロトニンが枯渇し、ビタミンB6も減っていた
つまり、腸内細菌がいなくなると、眠る時間と起きている時間のメリハリが弱まったということです。ただし、これはマウスでの研究で、同じことが人でも起こるかはまだわかっていません。
睡眠ホルモンの材料と腸の関係
夜に眠気をもたらすホルモン「メラトニン」は、セロトニンから作られます。体内のセロトニンの90%以上は腸で作られていて、その合成には腸内細菌が関わっていることがわかっています[2]。
ただし、腸で作られたセロトニンが、そのまま脳に入ってメラトニンになるわけではありません。「腸内環境が乱れると、すぐにメラトニンが不足する」と単純に結びつけるのは言い過ぎです。メラトニンの材料になるトリプトファンと睡眠の関係は「朝の1杯の味噌汁が、16時間後の深い眠りを作る理由」で詳しく解説しています。
発酵食品や腸活で睡眠はよくなる?研究でわかっていること
乳酸菌などで、睡眠の質が改善したという報告がある
乳酸菌やビフィズス菌などの「プロバイオティクス」と睡眠の関係を調べた研究をまとめた分析(2023年)では、プラセボ(偽の食品)と比べて、睡眠の質の指標(PSQI)が改善していました[4]。
一方で、日中の眠気の指標(ESS)には差がなく、研究によって報告の仕方がばらついていることが限界とされています[4]。改善したのは「よく眠れたと感じるか」という主観的な評価が中心です。
発酵食品で、腸内細菌の多様性が増えた
スタンフォード大学の研究では、健康な大人36人を発酵食品を多くとるグループと、食物繊維を多くとるグループに分けて、10週間の食事を続けてもらいました[3]。
ヨーグルトやキムチなどの発酵食品をとったグループでは、腸内細菌の種類(多様性)が増え、血液中の炎症に関わる物質19種類が減りました[3]。ただし、この研究では睡眠は調べていません。
食物繊維と睡眠の関係も研究されている
摂南大学などの研究では、健康な大人105人に4週間、食物繊維を補ってもらいました。その結果、一部の腸内細菌の割合が、朝の眠気や寝つきなどの睡眠の評価と関連していました[5]。食物繊維を1日25g程度とれていた人では、睡眠時間にもよい変化がみられたと報告されています[5]。
ただし、これは関連を探った段階の結果で、食物繊維が睡眠をよくすることが証明されたわけではありません。
「食べれば眠れる」わけではない
ここまでの研究をまとめると、腸内環境と睡眠に関係がある可能性は高まっていますが、発酵食品を食べるだけで睡眠が改善すると言い切れる段階ではありません。腸内環境の変化には時間がかかるため、特定の食品を大量にとるより、毎日の食事に少しずつ取り入れて続けることが大切です。
睡眠のために取り入れたい発酵食品
食品 | 特徴 | 取り入れ方のポイント |
|---|---|---|
納豆 | 納豆菌を含む発酵食品。メラトニンの材料になるトリプトファンも含む | 朝食に取り入れやすい |
ヨーグルト | 乳酸菌やビフィズス菌を含む。トリプトファンも含む | 毎日少量ずつ続ける。砂糖の多い製品はとりすぎに注意 |
味噌 | 麹で発酵させた伝統的な発酵食品 | 具だくさんの味噌汁にすれば、野菜や海藻の食物繊維も一緒にとれる |
ぬか漬け・キムチ | 乳酸菌で発酵させた漬物。野菜の食物繊維もとれる | 浅漬けや調味液に漬けたものは、乳酸発酵していないものもあるため表示を確認する |
味噌やキムチ、漬物は塩分が多い食品です。高血圧のある方は、量に気をつけましょう。
腸から整える食べ方のコツ
- 朝食に発酵食品を取り入れる:納豆やヨーグルト、味噌汁は朝食に取り入れやすく、毎日続けやすくなります。
- 食物繊維と一緒にとる:野菜、海藻、きのこ、豆類などの食物繊維は、腸内細菌のエサになります。
- いろいろな発酵食品を組み合わせる:一つの食品に偏らず、和食の一汁三菜を意識すると、自然と種類が増えます。
- 少量でも毎日続ける:腸内環境の変化には時間がかかります。数日で判断せず、続けることが大切です。
- 寝る直前の食べすぎは避ける:寝る直前にたくさん食べると、胃腸が働き続けて眠りの妨げになります。夕食は早めに済ませましょう。
食事を整えても眠れないときは
食事は睡眠を支える要素のひとつですが、それだけで睡眠の悩みがすべて解決するわけではありません。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、生活習慣を見直しても睡眠で休まった感じが得られない場合は、睡眠障害が隠れている可能性があるとして、医師への相談を勧めています[6]。
日本では、睡眠で休養が十分にとれていない人が約2割いるとされています[7]。特に、次のような場合は、睡眠時無呼吸症候群などの病気の可能性も考えて、一度ご相談ください。
- しっかり寝ても、朝に疲れが残る・熟睡感がない
- 家族から、いびきや睡眠中の呼吸停止を指摘された
- 日中に強い眠気がある
- 寝つけない、夜中に何度も目が覚める状態が続いている
寝ても疲れが取れない原因は「睡眠負債とは」、睡眠時無呼吸症候群の検査は「睡眠ポリグラフ検査(PSG)でわかること」で詳しく解説しています。
発酵食品と睡眠に関するよくある質問
発酵食品はいつ食べるのがいい?
決まった時間はありませんが、毎日続けやすい朝食に取り入れるのがおすすめです。納豆やヨーグルト、味噌汁は、メラトニンの材料になるトリプトファンも含んでいます。
どのくらい続ければ効果がある?
研究では、4〜10週間ほど続けて腸内細菌の変化を調べています[3][5]。睡眠への効果には個人差があり、必ず効果が出るとは限りません。少なくとも数週間は続けて、自分の体調を観察してみてください。
乳酸菌のサプリメントでもいい?
乳酸菌などのプロバイオティクスで主観的な睡眠の質が改善したという報告はありますが[4]、製品によって含まれる菌の種類や量はさまざまです。まずは普段の食事で発酵食品と食物繊維をとることを基本にしましょう。
発酵食品で不眠は治る?
発酵食品だけで不眠症や睡眠時無呼吸症候群が治るわけではありません。眠れない状態や日中の眠気が続く場合は、医療機関にご相談ください。
まとめ
- 腸と脳はつながっていて、腸内細菌が睡眠のリズムに関わることが動物実験で示されている
- 体内のセロトニンの90%以上は腸で作られるが、腸のセロトニンがそのまま脳でメラトニンになるわけではない
- 乳酸菌などで主観的な睡眠の質が改善したという報告がある一方、発酵食品で睡眠がよくなると言い切れる段階ではない
- 納豆、ヨーグルト、味噌、ぬか漬けなどを、食物繊維と一緒に毎日少しずつ続けるのがおすすめ
- 食事を整えても眠れない、疲れが取れない場合は、睡眠障害の可能性を考えて医療機関に相談する
当院では、睡眠時無呼吸症候群の診察・検査・治療に対応しています。症状や検査結果に応じた治療方法をご案内しますので、寝ても疲れが取れない方や、いびき・睡眠中の無呼吸が気になる方はご相談ください。
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参考文献
- Ogawa Y, et al. 腸内細菌叢の除去がマウスの睡眠・覚醒に与える影響(Scientific Reports, 2020). (筑波大学プレスリリース)
- Yano JM, et al. Indigenous bacteria from the gut microbiota regulate host serotonin biosynthesis. Cell. 2015;161(2):264-276.
- Wastyk HC, et al. Gut-microbiota-targeted diets modulate human immune status. Cell. 2021.(紹介記事)
- Microbiota Composition and Probiotics Supplementations on Sleep Quality—A Systematic Review and Meta-Analysis. Clocks & Sleep. 2023.
- 摂南大学. 発酵性食物繊維の摂取と腸内環境・睡眠に関するプレスリリース(Microorganisms誌掲載論文の紹介). 2025年10月.
- 厚生労働省. 健康づくりのための睡眠ガイド2023. 2024年2月.
- 厚生労働省. 休養・睡眠領域資料(第2回健康日本21(第三次)推進専門委員会 資料4-1). 2024年3月.