夜中に何度もトイレに起きるのは睡眠時無呼吸症候群のせい?夜間頻尿との関係と受診の目安

監修:松澤呼吸器クリニック 院長 松澤 邦明(日本睡眠学会指導医/日本呼吸器学会専門医/日本内科学会総合内科専門医)
監修日:2026年11月4日/公開日:2026年11月4日/最終更新日:2026年11月4日
この記事の結論
夜中に何度もトイレに起きる「夜間頻尿」は、年齢のせいだけでなく、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が原因になっていることがあります。13の研究をまとめた分析では、閉塞性睡眠時無呼吸のある人は、ない人に比べて夜間頻尿が約1.4倍多いと報告されています[2]。
無呼吸を治療するCPAP(持続陽圧呼吸療法)で、夜間の排尿回数が減ったという報告も複数あります[5][6]。大きないびきや呼吸の停止を指摘されたことがある方は、睡眠の検査も検討しましょう。
夜間頻尿とは
夜間頻尿とは、夜寝ている間に、排尿のために1回以上起きなければならない状態をいいます[1]。1回でも夜間頻尿に当てはまりますが、特に2回以上になると、睡眠が分断されて生活の質が下がりやすくなります。
夜間頻尿の原因は、大きく次の3つに分けられます。
- 夜間多尿:夜に作られる尿の量そのものが多い
- 膀胱にためられる量が少ない:過活動膀胱や前立腺肥大症など
- 眠りが浅い:睡眠障害のために目が覚めやすく、そのたびに尿意に気づく
睡眠時無呼吸症候群は、このうち「夜間多尿」と「眠りが浅い」の両方に関わります。
睡眠時無呼吸症候群で夜間頻尿が起こる3つの理由
1. 心臓から「尿を出すホルモン」が出る
健康な人は、眠っている間は作られる尿の量が減るため、朝までトイレに起きずに眠れます。
ところが睡眠中に気道がふさがると、息を吸おうとして胸の中の圧力が大きく下がります。すると心臓に戻る血液が増えて心臓の壁が引き伸ばされ、心臓は「体に水分が多すぎる」と判断します。その結果、尿を出す働きのあるホルモン「心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)」が分泌されます。
高齢者30人を調べた研究では、無呼吸低呼吸指数(AHI)が15以上の人は、夜間の尿量と血液中・尿中のANPが多くなっていました[3]。無呼吸のたびにこの仕組みが働くことで、夜に作られる尿が増えると考えられています。
2. 眠りが浅くなり、目が覚めやすい
無呼吸が起こると、体は息苦しさで脳を短く目覚めさせて、呼吸を再開させます。本人は覚えていなくても、これが一晩に何十回も繰り返されると、眠りは浅く細切れになります。
眠りが浅いと、膀胱にたまった尿の感覚で目が覚めやすくなります。睡眠時無呼吸症候群と夜間頻尿の研究をまとめた報告(2023年)でも、「目が覚めやすいこと」と「膀胱に尿がたまりやすいこと」が夜間頻尿の主な理由として挙げられています[4]。
3. 高血圧・糖尿病などの合併症
睡眠時無呼吸症候群の方は、高血圧や糖尿病、心臓の病気を合併しやすいことがわかっています。これらの病気や、その治療薬(利尿薬など)も、夜間の尿量を増やす原因になります。睡眠時無呼吸症候群と高血圧の関係は「睡眠時無呼吸症候群(SAS)と高血圧の関係」で解説しています。
研究でわかっている睡眠時無呼吸と夜間頻尿の関係
研究 | わかったこと |
|---|---|
13の研究をまとめた分析(2020年)[2] | 閉塞性睡眠時無呼吸のある人は、夜間頻尿が約1.4倍多い |
高齢者30人の研究(2004年)[3] | AHIが15以上の人は、夜間の尿量とANPが多い |
日本の90人の研究(2020年)[7] | 65歳未満の人では、AHIが高いほど夜間の排尿回数が多い |
38の研究をまとめた報告(2023年)[4] | 夜間頻尿は、睡眠時無呼吸症候群が重症になるほど増える |
若い人の夜間頻尿は特に注意
日本の研究では、65歳未満の人では、無呼吸の重症度や夜間の尿量が夜間の排尿回数と関連していました。一方、65歳以上の人では、こうした関連ははっきりしませんでした[7]。研究者は、泌尿器の病気がないのに夜間頻尿がある若い方では、睡眠時無呼吸症候群を原因の候補として考えるべきだとしています。
「まだ若いのに夜中にトイレで起きる」という方は、年齢のせいと決めつけずに、いびきや日中の眠気がないかも振り返ってみてください。
いびきがあれば必ず夜間頻尿になるわけではない
いびきをかく人が、すべて睡眠時無呼吸症候群というわけではありません。夜間頻尿と関わりが強いのは、呼吸が止まったり弱くなったりする「無呼吸を伴ういびき」です。家族から「呼吸が止まっている」と言われたことがある方は注意が必要です。
CPAP治療で夜間頻尿が改善した報告
睡眠時無呼吸症候群の標準的な治療であるCPAP(持続陽圧呼吸療法)は、睡眠中に鼻から空気を送り込んで気道がふさがるのを防ぐ治療です。
- 5つの研究(307人)をまとめた分析では、CPAP治療で夜間の排尿回数と夜間の尿量が減っていました[5]。
- 沖縄の医療機関で中等症以上の患者さん40人を調べた研究では、CPAPを3か月続けた後、夜間の排尿回数が平均2.1回から1.2回に減り、夜間の尿量も減っていました[6]。
ただし、研究の数や規模はまだ限られていて、治療で必ず夜間頻尿が治るとは限りません[4]。前立腺肥大症や過活動膀胱など、ほかの原因が重なっていることもあります。CPAPを続けるコツは「CPAPの使用感って実際どう?」で紹介しています。
睡眠時無呼吸症候群が隠れているかもしれないサイン
夜間頻尿に加えて、次のような症状に当てはまる場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
- 大きないびきをかく、睡眠中に呼吸が止まっていると言われた
- 夜中に2回以上トイレに起きる
- 朝起きても疲れが取れない、熟睡感がない
- 日中に強い眠気がある
- 朝起きたときに頭痛や口の渇きがある
- 高血圧の治療を受けている、または血圧が高めと言われた
- 太り気味、または最近体重が増えた
ご自身でできるチェック方法は「睡眠時無呼吸症候群のセルフチェック」もご覧ください。
夜間頻尿のために今日からできること
- 排尿の記録をつける:トイレに行った時間と1回の尿量を2〜3日記録する「排尿日誌」は、夜間頻尿の原因を調べる基本です[1]。受診のときに持参すると診察に役立ちます。
- 夕方以降の水分のとりすぎに注意:脱水にならない範囲で、寝る前の大量の水分は控えましょう。
- 寝る前のお酒・カフェインを控える:アルコールやカフェインには尿を増やす作用があります。お酒はいびきや無呼吸も悪化させます(「お酒と睡眠の質の関係」)。
- 夕方に足を高くする・軽く歩く:日中に足にたまった水分が、横になると血液に戻って尿になります。夕方に足を高くして休む、軽く歩くなどで、夜の尿量が減ることがあります。
これらを試しても夜間頻尿が続く場合や、いびき・日中の眠気がある場合は、医療機関で原因を調べましょう。
夜間頻尿と睡眠時無呼吸症候群に関するよくある質問
夜中にトイレに1回起きるのは異常?
夜中に1回でも排尿のために起きれば、定義上は夜間頻尿に当てはまります[1]。ただし、1回だけで困っていなければ、すぐに治療が必要とは限りません。2回以上起きる、起きた後に眠れない、日中の眠気がある場合は、相談をおすすめします。
泌尿器科と睡眠外来、どちらを受診すればいい?
排尿時の痛みや尿の勢いが弱いなど、排尿の症状が中心であれば泌尿器科がおすすめです。大きないびきや呼吸の停止、日中の眠気もある場合は、睡眠時無呼吸症候群の検査ができる睡眠外来や呼吸器内科への受診を検討してください。泌尿器科で治療しても改善しない夜間頻尿に、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることもあります。
睡眠時無呼吸症候群の検査はどうやるの?
ご自宅で行う簡易検査と、1泊入院して行う精密検査(睡眠ポリグラフ検査:PSG)があります。違いは「睡眠ポリグラフ検査(PSG)でわかること|簡易検査との違い」で解説しています。
CPAPを始めたら、夜間頻尿はすぐ治る?
研究では、数週間〜3か月ほどの治療で夜間の排尿回数が減ったと報告されています[6]。ただし効果には個人差があり、ほかの原因が重なっている場合は、その治療も必要です。
まとめ
- 夜間頻尿は年齢のせいだけでなく、睡眠時無呼吸症候群が原因になっていることがある
- 無呼吸があると、尿を出すホルモン(ANP)が増えて夜の尿量が増え、眠りも浅くなって目が覚めやすくなる
- 閉塞性睡眠時無呼吸のある人は、夜間頻尿が約1.4倍多いと報告されている
- 65歳未満で泌尿器の病気がないのに夜間頻尿がある場合は、特に睡眠時無呼吸症候群を疑う
- CPAP治療で夜間の排尿回数が減ったという報告がある
当院では、睡眠時無呼吸症候群の診察・検査・治療に対応しています。症状や検査結果に応じた治療方法をご案内しますので、夜中に何度もトイレに起きる方や、いびき・睡眠中の無呼吸が気になる方はご相談ください。
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参考文献
- 日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会 編. 夜間頻尿診療ガイドライン[第2版]. 2020年.
- Zhou J, Xia S, Li T, Liu R. Association between obstructive sleep apnea syndrome and nocturia: a meta-analysis. Sleep Breath. 2020;24(4):1293-1298.
- Umlauf MG, et al. Obstructive sleep apnea, nocturia and polyuria in older adults. Sleep. 2004;27(1):139-144.
- Di Bello F, et al. Nocturia and obstructive sleep apnea syndrome: A systematic review. Sleep Med Rev. 2023;69:101787.
- Wang T, Huang W, Zong H, Zhang Y. The Efficacy of Continuous Positive Airway Pressure Therapy on Nocturia in Patients With Obstructive Sleep Apnea: A Systematic Review and Meta-Analysis. Int Neurourol J. 2015;19(3):178-184.
- Miyazato M, et al. Effect of continuous positive airway pressure on nocturnal urine production in patients with obstructive sleep apnea syndrome. Neurourol Urodyn. 2017;36(2):376-379.
- Miyauchi Y, et al. Obstructive Sleep Apnea Syndrome as a Potential Cause of Nocturia in Younger Adults. Urology. 2020;143:42-47.