睡眠ポリグラフ検査(PSG)でわかること|簡易検査との違い

睡眠ポリグラフ検査(PSG)は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断で基準となる検査です。自宅でできる簡易検査は手軽ですが、脳波を測らないため、無呼吸の重症度が実際より低く出ることがあります。
「簡易検査を受けたのに、精密検査も必要と言われた」「簡易検査で問題なしと言われたが、いびきや眠気が続いている」。この記事は、そんな疑問を持つ方に向けて、2つの検査の違いを根拠とともにお伝えします。
この記事でわかること
- PSGと簡易検査で、測れるものの違い
- 簡易検査で数値が低く出やすい2つの理由
- 検査結果に書かれる「AHI」の読み方
- 2026年6月の改定で変わった、CPAP治療の保険適用基準
- PSGを受けたほうがよいケース
PSGと簡易検査の違い|いちばん大きいのは「脳波」の有無
2つの検査の最大の違いは、眠っているかどうかを脳波で確かめられるかどうかです。簡易検査は呼吸と酸素の状態を記録しますが、脳波は測りません。
比較項目 | 簡易検査(自宅) | 睡眠ポリグラフ検査(PSG) |
|---|---|---|
主な測定項目 | 鼻・口の気流、血中の酸素(SpO2)、脈拍、いびき など | 左の項目に加え、脳波・眼球の動き・あごと足の筋電図・胸とお腹の呼吸運動・心電図・体の向き |
眠っている時間 | わからない(記録した時間で計算) | 脳波で正確にわかる |
眠りの深さ・中途覚醒 | わからない | 睡眠段階ごとにわかる |
無呼吸の重症度 | 低めに出ることがある | 基準となる値が得られる |
無呼吸以外の病気(周期性四肢運動など) | 判別できない | 手がかりが得られる |
受け方 | 機器を借りて自宅で装着 | 当院では検査入院(1泊)または在宅PSG |
※簡易検査で測れる項目は、使用する機器によって異なります。
日本呼吸器学会などがまとめた「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」でも、米国睡眠医学会(AASM)の診療ガイドラインでも、PSGは成人の閉塞性睡眠時無呼吸を診断する標準的な検査と位置づけられています。簡易検査は、中等症以上が強く疑われる方を効率よく見つけるための検査です。
簡易検査で数値が低く出やすい2つの理由
簡易検査の結果が軽く出るのは、検査の仕組みによるものです。機器の故障や装着ミスとは限りません。
理由1:「眠っていない時間」も割り算に入る
無呼吸の重症度は「1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数」で表します。PSGは脳波で実際に眠っていた時間を割り出し、その時間で割ります。
簡易検査は眠っていたかどうかがわからないため、機器をつけていた時間全体で割ります。寝つけずにいた時間や夜中に目が覚めていた時間も分母に入るので、そのぶん数値が小さくなります。
例えば、一晩で無呼吸・低呼吸が96回あった方を考えてみます。
- 実際に眠っていた6時間で割ると、1時間あたり16回(中等症)
- 機器をつけていた8時間で割ると、1時間あたり12回(軽症)
同じ一晩の記録でも、割る時間が違うだけで重症度の区分が変わってしまいます。米国睡眠医学会の学術誌に掲載された研究でも、簡易検査はこの仕組みにより重症度を低く見積もりやすいと報告されています。
理由2:脳が起きた「覚醒反応」を数えられない
呼吸が浅くなる「低呼吸」は、気流の低下に加えて、次のどちらかを伴うときに数えます。
- 血中の酸素が3%以上下がる
- 脳波で一瞬目が覚める反応(覚醒反応)が出る
脳波がない簡易検査では、2つ目を確認できません。酸素はあまり下がらないものの、そのたびに眠りが分断されている。そんな方では、簡易検査の数値と実際の症状が合わないことがあります。米国睡眠医学会も、覚醒反応を含めた判定の重要性を示しています。
だから「簡易検査で異常なし」でも終わりではありません
米国睡眠医学会の診療ガイドラインは、簡易検査の結果が陰性・判定不能・記録不十分だった場合にはPSGを行うよう推奨しています。いびきや日中の眠気などの症状が続くときは、簡易検査の結果だけで判断しないことが大切です。
検査結果の「AHI」の読み方
AHI(無呼吸低呼吸指数)は、眠っている1時間あたりに無呼吸と低呼吸が何回起きたかを示す数値です。結果報告書で最初に見ていただきたい項目です。
- 無呼吸:口と鼻の空気の流れが10秒以上止まること
- 低呼吸:空気の流れが10秒以上弱くなり、酸素の低下か覚醒反応を伴うこと
AHI(1時間あたり) | 重症度の目安 |
|---|---|
5未満 | 正常範囲 |
5以上15未満 | 軽症 |
15以上30未満 | 中等症 |
30以上 | 重症 |
国際的な診断基準(睡眠障害国際分類 第3版)では、AHIが5以上でいびき・眠気などの症状を伴う場合、または症状にかかわらず15以上の場合に、閉塞性睡眠時無呼吸と診断します。
PSGの報告書には、AHIのほかに睡眠効率(横になっていた時間のうち眠れていた割合)や深い睡眠の割合も記載されます。数値だけでは判断せず、症状や合併症とあわせて医師が総合的に評価します。
2026年6月改定で変わった、CPAP治療の保険適用基準
2026年6月の診療報酬改定で、CPAP治療を健康保険で始められる基準が引き下げられました。PSGが中等症の方の治療開始に直結する検査になった点が、今回の大きな変化です。
改定前(〜2026年5月) | 改定後(2026年6月〜) | |
|---|---|---|
PSGで判定する場合 | AHI 20以上 | AHI 15以上 |
PSGを経ずに判定する場合(簡易検査など) | AHI 40以上 | AHI 30以上 |
いずれの場合も、日中の眠気や起床時の頭痛など、日常生活に支障が出るほどの自覚症状があることが条件です。AHIが15以上30未満の方は、PSGで睡眠の分断や深い睡眠の減少が確認され、CPAPでそれが改善することが要件になっています。
つまり、簡易検査でAHIが15〜29だった方は、PSGを受けることで保険でのCPAP治療を検討できる場合があります。前述のとおり簡易検査は数値が低めに出やすいため、簡易検査で15未満だった方が、PSGでは15以上になることもあります。
※実際に保険適用となるかは、検査結果と症状をもとに医師が判断します。
PSGを受けたほうがよいのはこんな方
次のいずれかにあてはまる方は、簡易検査だけで判断せず、PSGでの評価を医師とご相談ください。
- 簡易検査で「異常なし」「軽症」だったが、いびき・眠気・起床時の頭痛が続いている
- 簡易検査でAHIが15〜29だった(保険でのCPAP治療を検討できる可能性があります)
- 簡易検査の記録がうまく取れなかった(センサーが外れた、ほとんど眠れなかった など)
- 心不全・脳卒中・神経や筋肉の病気など、持病がある
- 無呼吸以外の睡眠の病気(足のぴくつき、寝ぼけ行動、強い不眠など)が疑われる
持病のある方や、無呼吸以外の睡眠の病気が疑われる方には、米国睡眠医学会も簡易検査ではなくPSGを推奨しています。
松澤呼吸器クリニックでのPSGの受け方
当院では、外来受診から段階を踏んでPSGへ進みます。初診当日にそのまま検査入院になることはありません。
- 外来受診:症状・生活習慣・持病を確認します
- 簡易検査(自宅):機器をお貸しし、ご自宅で一晩記録します
- 結果説明:簡易検査の結果をもとに、PSGが必要かを医師がご説明します
- PSG:検査入院(1泊)または在宅PSGで行います
検査入院は火・水・木・金曜日の夜に行っています。夕方〜夜(18時頃まで)に来院し、翌朝6〜7時頃に退院できるため、多くの方が仕事や学校を休まずに受けています。検査入院の自己負担額の目安は、3割負担で16,160円です。
入院の流れや持ち物は「睡眠時無呼吸症候群の検査入院とは」、ご自宅で受けるPSGは「ご自宅で出来る睡眠時無呼吸症候群の精密検査とは?」で詳しくご紹介しています。
よくあるご質問
Q. 簡易検査を飛ばして、最初からPSGを受けられますか?
A. すでに他院で簡易検査を受けられており、紹介状をお持ちの場合は医師の判断で最初からPSGを行うことがあります。まずは外来でご相談ください。
Q. 市販の検査キットやスマートウォッチの結果では診断できませんか?
A. 診断や保険でのCPAP治療には、医療機関での検査が必要です。市販品やアプリの結果は、受診のきっかけとしてお役立てください。
Q. 慣れない場所で眠れなかったら、PSGの結果はどうなりますか?
A. PSGは脳波で実際に眠れた時間を把握できるため、眠りの浅さや寝つきの悪さも含めて評価できます。病院では眠れるか不安な方には、在宅PSGという選択肢もあります。
Q. 以前、簡易検査で「CPAPの基準に届かない」と言われました。もう一度相談してもよいですか?
A. はい。2026年6月の改定で基準が下がっているため、以前は対象外だった方でも、PSGの結果によっては保険でのCPAP治療を検討できる場合があります。
まとめ|簡易検査の結果に納得できないときは、PSGでの確認を
- 簡易検査は手軽な一方、脳波を測らないため、重症度が低めに出ることがある
- PSGは実際に眠っていた時間と覚醒反応まで測れる、診断の基準となる検査
- 2026年6月から、PSGでAHI 15以上なら保険でのCPAP治療を検討できるようになった
- 簡易検査で「異常なし」でも症状が続く方は、PSGでの評価を相談する価値がある
当院は、日本睡眠学会の専門医が診療する睡眠時無呼吸症候群の専門クリニックです。検査入院によるPSGと在宅PSGのどちらにも対応しています。いびきや日中の眠気が気になる方、他院の簡易検査の結果についてご相談したい方は、お気軽にご予約ください。
▶ 初診・お久しぶりの方のWEB予約(24時間受付)
https://matsuzawa-cl.com/yoyaku/
▶ お電話でのお問い合わせ
06-6120-3177(火〜金 10:00〜19:00、土 9:00〜13:00)